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更級日記

(六)隅田川

 野山にあしおぎとの中を分けるよりほかのこともない。武蔵と相模との中にあって「あすだ」河というのは、在五中将が
 
  いざ言問はむ
 
(さあ問いかけよう)
 
と詠んだ渡りである。
 中将の集には隅田川とある。
 そこを舟にて渡ってしまえば相模の国になる。
 「にしとみ」というところの山は、絵の良く描けた屏風びょうぶが立ち並んでいるようである。
 もう一方は海だ。
 浜の様も、寄せては返す波の様子もはなはだ楽しい。
 唐土もろこしヶ原というところも、これは、砂のはなはだ白いところを二、三日行く。
「夏は大和なでしこが、濃く薄く、錦を引いているように咲くのです。それは、秋の末なので見えませぬ」
と人は言うのに、なおところどころは、落ち散りつつ、物悲しげに咲き渡っている。
 唐土ヶ原に大和なでしこが咲いたとは、などと人々がおかしがる。
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作成者: com

内容
・日本の(主に平安)古典の現代語訳

対象読者
・古文の授業で習った作品の全体像を知りたい中高生
・日本の古典にもう一度触れてみたくなった大人

翻訳の方針
・主語をなるべく補う。呼称もなるべく統一。
・一つの動詞に尊敬語と謙譲語が両方つく場合、尊敬語のみを訳出。
 (例)「見たてまつりたまふ」→「御覧になる(×拝見なさる)」
・今でも使われている単語は無理に言い換えない。
・説明的な文章を排し、簡潔に。

※これらは受験古文の方針とは異なるかもしれませんが、現代語としての完成度を優先しました。

作品
・完了 :更級日記(令和二年四月~七月)
・進行中:源氏物語(抄)(令和二年七月~)
・今後手がけたい:とはずがたり、紫式部日記、枕草子、蜻蛉日記、和泉式部日記、夜の寝覚め、堤中納言物語、伊勢物語、竹取物語、大鏡、増鏡、土佐日記

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