野山に葦 と荻 との中を分けるよりほかのこともない。武蔵と相模との中にあって「あすだ」河というのは、在五中将が
いざ言問はむ
(さあ問いかけよう)
と詠んだ渡りである。
中将の集には隅田川とある。
そこを舟にて渡ってしまえば相模の国になる。
「にしとみ」というところの山は、絵の良く描けた屏風 が立ち並んでいるようである。
もう一方は海だ。
浜の様も、寄せては返す波の様子もはなはだ楽しい。
唐土 ヶ原というところも、これは、砂のはなはだ白いところを二、三日行く。
「夏は大和なでしこが、濃く薄く、錦を引いているように咲くのです。それは、秋の末なので見えませぬ」
と人は言うのに、なおところどころは、落ち散りつつ、物悲しげに咲き渡っている。
唐土ヶ原に大和なでしこが咲いたとは、などと人々 がおかしがる。
いざ言問はむ
(さあ問いかけよう)
と詠んだ渡りである。
中将の集には隅田川とある。
そこを舟にて渡ってしまえば相模の国になる。
「にしとみ」というところの山は、絵の良く描けた
もう一方は海だ。
浜の様も、寄せては返す波の様子もはなはだ楽しい。
「夏は大和なでしこが、濃く薄く、錦を引いているように咲くのです。それは、秋の末なので見えませぬ」
と人は言うのに、なおところどころは、落ち散りつつ、物悲しげに咲き渡っている。
唐土ヶ原に大和なでしこが咲いたとは、などと