そこより「ゐのはな」という、言いようもなく難儀な坂を上ってしまえば、三河の国の高師 の浜というところ。
八橋 は、名ばかりで橋は跡形もなく、何の見どころもない。
二村山の中に泊まった夜、大きな柿の木の下にいおりを作ったので、夜もすがらいおりの上に柿が落ち掛かったのを、人々 が拾いなどする。
宮路の山というところを越える折は、神無月の下旬であるのに紅葉も散らないで盛りである。
嵐こそ吹きこざりけれ
宮路山 まだもみぢ葉の 散らで残れる
(嵐が吹いてこなかったのだ。宮路山には、まだもみじ葉が、散らないで残っている)
三河と尾張との間にある志香須賀 の渡りは、誠に、しかすが に渡るのを思い煩うてしまいそうで面白い。
尾張の国、鳴海 の浦を通っていると、夕潮がただ満ちに満ちてきて、
「こよい宿ろうにも、中ほどで潮が満ちてしまえば、ここを過ぎられそうもない」
と全員うろたえて、走って過ぎた。
二村山の中に泊まった夜、大きな柿の木の下にいおりを作ったので、夜もすがらいおりの上に柿が落ち掛かったのを、
宮路の山というところを越える折は、神無月の下旬であるのに紅葉も散らないで盛りである。
嵐こそ吹きこざりけれ
宮路山
(嵐が吹いてこなかったのだ。宮路山には、まだもみじ葉が、散らないで残っている)
三河と尾張との間にある
尾張の国、
「こよい宿ろうにも、中ほどで潮が満ちてしまえば、ここを過ぎられそうもない」
と全員うろたえて、走って過ぎた。