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更級日記

(二十)夢

 物語のことを朝から晩まで思い続け、夜も目の覚めている限りはそのことをのみ心にかけていた頃に夢に見えたこと……
 
「この頃、皇太后の宮の娘御の一品いっぽんの宮の御ために、六角堂にやり水を造っておるのでございます」
と言う人がいたのを、
「それはまたどうして」
と問えば、
天照大御神あまてらすおおみかみを念じ申し上げなさい」
と言う……
 
と見て、それを人に語るでもなく、何とも思わずにしまったことが、本当にふがいない。
 春ごとに、この一品の宮の御殿を眺めやっては
 
  咲くと待ち 散りぬと嘆く
   春はただ我が宿顔に花を見るかな
 
(咲くと言っては待ち、散ったと言っては嘆いている。春にはただ、我が家のやうな顔で花を見ているのだ)
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作成者: com

内容
・日本の(主に平安)古典の現代語訳

対象読者
・古文の授業で習った作品の全体像を知りたい中高生
・日本の古典にもう一度触れてみたくなった大人

翻訳の方針
・主語をなるべく補う。呼称もなるべく統一。
・一つの動詞に尊敬語と謙譲語が両方つく場合、尊敬語のみを訳出。
 (例)「見たてまつりたまふ」→「御覧になる(×拝見なさる)」
・今でも使われている単語は無理に言い換えない。
・説明的な文章を排し、簡潔に。

※これらは受験古文の方針とは異なるかもしれませんが、現代語としての完成度を優先しました。

作品
・完了 :更級日記(令和二年四月~七月)
・進行中:源氏物語(抄)(令和二年七月~)
・今後手がけたい:とはずがたり、紫式部日記、枕草子、蜻蛉日記、和泉式部日記、夜の寝覚め、堤中納言物語、伊勢物語、竹取物語、大鏡、増鏡、土佐日記

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