暁になってしまったろうかと思っていると、山の方より人があまた来るような音がする。
驚いて見やったところ、鹿が縁のもとまで来て鳴いているのは、こう近くてはゆかしくない声である。
秋の夜の 妻恋ひ兼ぬる鹿の音は
遠山にこそ聞くべかりけれ
(秋の夜の、妻恋を遂げ得ぬ鹿の声は、遠い山にこそ聞くべきものだったのだ)
近辺まで知人が来て帰ったことを聞いたので
まだ人目知らぬ 山辺の松風も
音して帰るものとこそ聞け
(人をまだ見知らぬ山辺の松風でも、音沙汰があって帰るものだと聞きますよ)
驚いて見やったところ、鹿が縁のもとまで来て鳴いているのは、こう近くてはゆかしくない声である。
秋の夜の
遠山にこそ聞くべかりけれ
(秋の夜の、妻恋を遂げ得ぬ鹿の声は、遠い山にこそ聞くべきものだったのだ)
近辺まで知人が来て帰ったことを聞いたので
まだ人目知らぬ
音して帰るものとこそ聞け
(人をまだ見知らぬ山辺の松風でも、音沙汰があって帰るものだと聞きますよ)