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更級日記

(四十七)父帰京

 東国に下っていた父がようよう帰京して西山の某所に落ち着いたので、そこに皆で移って父を見るとはなはだうれしく、月の明るいもすがら物語などをして
 
  かかるもありけるものを
   限りとて君に別れし秋はいかにぞ
 
(このような夜を過ごす時がやってまいりましたものの、これを限りとあなたに別れたあの秋はどんなにか)
 
と言ったところ父はひどく泣いて
 
  思ふことかなはず なぞといとひこし
   命のほども今ぞうれしき
 
(思うことがかなわず、怪訝に思うてきたこの寿命も、今はうれしいことです)
 
 これが別れの門出と父が言って知らせた折の悲しさよりも、つつがなく会うことのできたうれしさは限りもないけれど、
「人の上にも見たことだが、老いて衰えてしまっては、世に出て交わるのもばからしいと見えるから、私はこれで籠居してしまおう」
とばかり、残りの寿命もないように思うて言うらしいので、私は心細さに堪えなかった。
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作成者: com

内容
・日本の(主に平安)古典の現代語訳

対象読者
・古文の授業で習った作品の全体像を知りたい中高生
・日本の古典にもう一度触れてみたくなった大人

翻訳の方針
・主語をなるべく補う。呼称もなるべく統一。
・一つの動詞に尊敬語と謙譲語が両方つく場合、尊敬語のみを訳出。
 (例)「見たてまつりたまふ」→「御覧になる(×拝見なさる)」
・今でも使われている単語は無理に言い換えない。
・説明的な文章を排し、簡潔に。

※これらは受験古文の方針とは異なるかもしれませんが、現代語としての完成度を優先しました。

作品
・完了 :更級日記(令和二年四月~七月)
・進行中:源氏物語(抄)(令和二年七月~)
・今後手がけたい:とはずがたり、紫式部日記、枕草子、蜻蛉日記、和泉式部日記、夜の寝覚め、堤中納言物語、伊勢物語、竹取物語、大鏡、増鏡、土佐日記

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