また初瀬に詣でてみれば、初めてのときよりは格別に心強い。
ところどころで饗応 などされてとっとと行くこともできない。
山城の国は祝園 の小楢 の森など、紅葉が至って美しい折であった。
初瀬川を渡るにも
初瀬川立ち返りつつ訪ぬれば
杉のしるしもこの度や見む
(初瀬川に返すこの波のように繰り返し訪ねたのだから、この度はあの杉のしるしをも見るでしょうか)
と思うのも至って頼もしい。
三日そこにいて退出したところ、例の奈良坂の都側にある小家などには、この度は至ってともがらも多いので宿れそうになく、野中に仮初めにいおりを作って私らを据えたので、従者はただ野にいて夜を明かす。
草の上にむかばきなどを敷いて、上にむしろを敷いて、至って粗末に夜を明かす。
頭もじっとりするほど露が置いている。
暁方の月は本当に澄み渡り、喩えようもなく美しい。
行方なき旅の空にも後れぬは
都にて見し有明の月
(当てどない旅の空にあっても後れてこないものは、都で見ていた有明の月だ)
ところどころで
山城の国は
初瀬川を渡るにも
初瀬川立ち返りつつ訪ぬれば
杉のしるしもこの度や見む
(初瀬川に返すこの波のように繰り返し訪ねたのだから、この度はあの杉のしるしをも見るでしょうか)
と思うのも至って頼もしい。
三日そこにいて退出したところ、例の奈良坂の都側にある小家などには、この度は至ってともがらも多いので宿れそうになく、野中に仮初めにいおりを作って私らを据えたので、従者はただ野にいて夜を明かす。
草の上にむかばきなどを敷いて、上にむしろを敷いて、至って粗末に夜を明かす。
頭もじっとりするほど露が置いている。
暁方の月は本当に澄み渡り、喩えようもなく美しい。
行方なき旅の空にも後れぬは
都にて見し有明の月
(当てどない旅の空にあっても後れてこないものは、都で見ていた有明の月だ)