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更級日記

(七十五)信濃守

 夫のことにとかく気をもむのみで、宮仕えをしたとはいっても、元は一筋に奉仕を続けたかった……そうしていればどうなっていたであろう。時々顔を出すくらいでは、どうなるはずのものでもないようだ。
 年もいよいよ盛りを過ぎてゆくのに、若々しいようにしているのも似合わしくなく思われてくる内に、私は病がいたく重くなり、心に任せて参詣などしていたのがそれもできなくなって、宮家へたまさかに顔を出すことも絶え、長らえるべくもない心地がするので、幼子たちのことをどうにか、私が世に在る間に取り計らっておきたいものだと起き伏し悲しみ、頼みの夫の喜びの折をじれったく待ってはこいねがうのに、秋になって、待ち受けていたように任官はあったけれども、思っていた国ではなく、至って不本意で口惜しい。
 親の折より繰り返し受けた東国よりは近いように聞こえるので、やむを得ないということで、程なく下るべく準備をした。門出は、娘が新しく移った家で、葉月の十余日に行った。
 後のことは知らずその間の有り様は、物騒がしいまで人が多く、活気づいていた。
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作成者: com

内容
・日本の(主に平安)古典の現代語訳

対象読者
・古文の授業で習った作品の全体像を知りたい中高生
・日本の古典にもう一度触れてみたくなった大人

翻訳の方針
・主語をなるべく補う。呼称もなるべく統一。
・一つの動詞に尊敬語と謙譲語が両方つく場合、尊敬語のみを訳出。
 (例)「見たてまつりたまふ」→「御覧になる(×拝見なさる)」
・今でも使われている単語は無理に言い換えない。
・説明的な文章を排し、簡潔に。

※これらは受験古文の方針とは異なるかもしれませんが、現代語としての完成度を優先しました。

作品
・完了 :更級日記(令和二年四月~七月)
・進行中:源氏物語(抄)(令和二年七月~)
・今後手がけたい:とはずがたり、紫式部日記、枕草子、蜻蛉日記、和泉式部日記、夜の寝覚め、堤中納言物語、伊勢物語、竹取物語、大鏡、増鏡、土佐日記

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