秋、源氏、雲林院 に詣でる。そこの紅葉を藤壺に奉る。
一通りのことや、東宮に関することなどについては、信頼しているというふうで、生真面目な返書ばかりを藤壺はおよこしになったので、源氏は「誠におもんぱかりの賢いことよ。いつも変わらずに」と、恨めしくは御覧になるけれど、何事にもしばしば後ろ盾になってこられたのだから「人からいぶかしく見とがめられては」とお思いになって、藤壺が御退出になるはずの日には参上した。まず主上の居室に参上したところ、静かに過ごしておいでになる折で、昔や今の物語を申し上げる。お姿も、故院に本当によく似ておいでになって今少し艶に美しい気 が添うて、慕わしく和やかでいらしたのである。お会いになってみると互いに感慨も深い。朧月夜の尚 の君と、なお絶えていない事情も聞こし召し、その気配を御覧になる折もあるのだけれど、「いやいや、今始めたことならともかく、誠に、心を交わしても似合わしいような、二人の取り合わせではないか」と思うようにおなりになっ ておとがめにならなかったのである。
よろずのお話をしたり、学問の道ではっきりしないところを問うたりなさって、また、好き者めいた歌物語なども互いに語り合われるついでに、あの斎宮がお下りになっ た日のこと、お姿のかわいらしくていらしたことなどをお語りになるので、源氏も打ち解けて、野宮のあの物悲しかったあけぼののことも皆口に出しておしまいになった。二十日の月が次第に差し始めて面白い折なので、遊びなどもしたくなる折だなと主上は仰せられる。
よろずのお話をしたり、学問の道ではっきりしないところを問うたりなさって、また、好き者めいた歌物語なども互いに語り合われるついでに、あの斎宮がお下りに