釜飯屋の更級日記

(十九)紅葉

 あの足柄山の麓のように木々が鬱蒼と茂っているところなので、神無月ばかりの紅葉は周りの山辺よりもなおさら優れて面白く、錦を引いてあるようなのに、よそから来た人が
「今参りました道に、紅葉のいたく面白いところがございまして」
と言うので、ふと
 
  いづこにも劣らじものを
   我が宿の 世をあきはつる気色ばかりは
 
(どこにも劣りはしまいものを。世に飽き果てている我が家のこの様子ばかりは)
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