釜飯屋の更級日記

(二十三)長恨歌

「世間には、長恨歌という文を物語に書いてあるところがあるそうな」
と聞くのではなはだ見たいのに頼み込めずにいたけれども、適当な頼りを尋ねて七月ふみづき七日に言いやる。
 
  契りけむ 昔の今日のゆかしさに
   天の川波打ちいでつるかな
 
(楊貴妃が契りましたとかいう昔のこの日のゆかしさに、天の川の波のように私も声を立てたのです)
 
返し
 
  立ちいづる 天の川辺のゆかしさに
   常はゆゆしきことも忘れぬ
 
(この文は、平生ならば忌むべきですが、ひこ星の現れます天の川のほとりのゆかしさに、そのことも忘れてしまいました)
モバイルバージョンを終了