釜飯屋の更級日記

(二十八)司召

 翌年、睦月の司召に父の祝いをできそうなことがあったのに、そのかいもなかった朝早く、同じ心に思っているはずの人のもとより
「今年こそ、そうはいってもと思いつつ、明けるのを待つ待ち遠しさよ」
と言って
 
  明くる待つ 鐘の声にも夢覚めて
   秋のもも夜の心地せしかな
 
(明けるのを待っていましたが、鐘の声にも夢は覚めて、秋の百夜が過ぎた心地がしたのでした)
 
と言ってきた返事に、
 
  暁を何に待ちけむ
   思ふこと成る鳴るとも聞かぬ 鐘の音ゆゑ
 
(なぜ暁を待っていたのでしょう。思うことが成り、鳴るとも聞かぬその鐘の音ゆえに)
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