釜飯屋の更級日記

(四十五)天照大神

 たわいもなかった頃から、心に常に天照大神を念じ申し上げなさいと言う人があった。
 どちらにおいでの神やら仏やらなどと言っていたけれども、次第に分別がついて人に問うてみると、
「神でいらっしゃいます。伊勢においでになります。紀伊国造きいのくにのみやつこと申すのはこの御神のです。そのほか、温明殿うんめいでん守宮神すくじんとしておいでになります」
と言う。
……伊勢の国まで行かれようとは思いもかけない。温明殿にもどうして参拝できようか。空の光を念じ申し上げるべきか……などと、浮いた心のままに思われた。
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