東は、野がはるばるとあって、山際は、比叡 の山よりして、稲荷 などという山まで明らかに見え渡り、南は、双 の岡の松風が、至って耳に近く心細く聞こえて、こちら側の頂まで、田に鳴子 というものを引き鳴らす音など、本当に田舎の風情で、月の明るい夜など本当に楽しいので、眺め明かして暮らすけれども、知った人は、里から遠くなっては音沙汰もない。
何かのついでに、いかがお過ごしでしょうと伝えてきた人に驚いて
思ひいでて人こそ問はね
山里のまがきの荻に秋風は吹く
(人は思い出して訪ねてきてもくださいませんけれど、秋風は、この山里の、まがきの荻に吹いてきます)
と言わせに人をやる。
何かのついでに、いかがお過ごしでしょうと伝えてきた人に驚いて
思ひいでて人こそ問はね
山里のまがきの荻に秋風は吹く
(人は思い出して訪ねてきてもくださいませんけれど、秋風は、この山里の、まがきの荻に吹いてきます)
と言わせに人をやる。