釜飯屋の更級日記

(四十九)母出家

 神無月になって京に移る。
 母は尼になって、同じ家の内ではあるけれども、別の方角に離れて住んでいた。
 父はただ、私を家長に据えて、自分は世に出て交わりもせず、陰に隠れたようにしているのを見るのも、頼もしげなく心細く思われていたところ、ゆかりがあって私のことを御存じのところから、何となくつれづれに心細く過ごしているよりは、とお召しがあったのに、昔めいた両親は、宮仕えは至ってつらいものだと思って私を家で過ごさせていたけれども、
「今の世の人は皆出仕するものですよ。それでおのずからうまくいくためしもあるのです。試みにそうなさい」
という人々があって渋々私を出仕させられる。
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