釜飯屋の更級日記

(五十四)仏名会

 師走の二十五日、例の出仕した宮家の仏名会にお召しがあったので、その夜ばかりはと思って参上した。
 四十人余りが皆、白いきぬに濃い掻練を着て坐っている。
 宮仕えの導きをしてくれた人の陰に隠れて、人中にはちらと顔を見せ、暁には退出する。
 雪も散りつつ、はなはだ厳しくさえて、凍ったような暁方の月が、ほのかに、色濃い掻練の袖に映っているのも、誠に、ぬれた顔のごとくである。
 道すがら
 
  年は暮れ 夜は明け方の月影の
   袖に映れる程ぞはかなき
 
(年は暮れ、夜は明け、明け方の月影が、袖に映っている折ははかない)
モバイルバージョンを終了