釜飯屋の更級日記

(五十六)その後

 その後は、何となく取り紛れるようで、物語のことも絶えて思い出されず、心の様もすっかり真面目になって……なぜ、多くの年月をむなしく起き伏しし、戒行をも参詣をもしなかっただろう。例の心当てにしても、私の思っていたことは、この世にありそうなことだったろうか。光源氏ほどの人がこの世においでになるであろうか。薫大将にひそかに宇治に住まわされようはずもないこの世である。ああ物狂おしいことだ。いかに由ない心であったか……と深く感じてはなはだ真面目に過ごそうというのならまだしも、すっかりそうなるのでもなかった。
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