釜飯屋の更級日記

(六十)水鳥

 御前に伏していて、聞けば池の鳥たちが夜もすがら、羽を振り声々に騒ぐ音がするので目も覚めて
 
  我がごとぞ 水のき寝に明かしつつ
   上毛の霜を払ひわぶなる
 
(鳥たちも私のように、水に浮いたような、憂い眠りの中で夜を明かしつつ、上毛の霜を払いわびているようだ)
 
と独り言に言ったのを、傍らに伏しておいでになった人が聞きつけて
 
  まして思へ 水の寝の程だにぞ
   上毛の霜を払ひわびける
 
(私のことをなおさら思うてもみてください。水の上の雁がするような、ほんの仮寝の間にも、上毛の霜を払いわびるとおっしゃるのでしたら)
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