釜飯屋の更級日記

(六十一)篠薄

 交際のある者どうしで、つぼねの隔てになったやり戸を共に開け、物語などして暮らしていたある日のこと、これもやはり交際のある人が宮の御方のところにおいでになるのを、度々呼び戻そうとしたのに、大切なことであれば行きましょうということなので、そこに枯れた薄があったのに付けて
 
  冬れのしののをすすき 袖たゆみ
   招きも寄せじ 風に任せむ
 
(離れたところにいるあなたに、穂も出ていないこの冬枯れの薄のように振っている袖が、もうだるいので、招き寄せもしますまい。風に任せておきましょう)
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