釜飯屋の更級日記

(六十六)また石山へ

 二年ばかりしてまた石山に籠もっていると、夜もすがら雨がひどく降るのである。
 旅にあると雨は至っていとわしいものだと、それを聞いてしとみを押し上げて見れば、有明の月が、谷の底さえ曇りなく見えるほど澄み渡っており、雨と聞えたのは木の根より水の流れる音であった。
 
  谷川の流れは雨と聞こゆれど
   ほかよりけなる有明の月
 
(谷川の流れは雨と聞こえるけれども、よそよりなおさら晴れ渡っている有明の月だ)
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