釜飯屋の更級日記

(八十一)涙

 懇ろに交際していた人が、こうなって後は訪れてもこないので、
 
  今は世にあらじものとや思ふらむ
   あはれ 泣く泣くなほこそはふれ
 
(今は世に在るまいと、私のことを思っているのでしょう。ああ、なおも泣く泣く年を経ているのです)
 
 また神無月が来て、月がはなはだ明るいのを泣く泣く眺めて
 
  暇もなき涙に曇る心にも
   明しと見ゆる月の影かな
 
(暇もない涙に曇る心にも、明るく見えるこの月の影だ)
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