釜飯屋の更級日記

第一篇「スワン家の方へ」第二部「スワンの恋」①


 こうした密通や恋のひとつひとつはおよそ、スワンがその顔や姿を見て努めずとも自然に魅力を感じ、そのようにして生まれた夢が具現化したものであったが、ある日、劇場でオデット・ド・クレシーを旧友から紹介された時は││その男はオデットのことを魅力的な女性で、スワンになびくかもしれないと話していたが、実際の彼女よりは難しい対象に仕立て、その紹介の恩恵が特別なものであるように見せ掛けていた││彼女はスワンにとって確かに美しくなくもないと感じられたが、可も不可もなく欲望もかき立てずある種の感覚的な反発を与えるような美しさを備えているように思われた。男なら誰でも何人か挙げることのできる、そして各々異なる例を挙げることのできる、肉体の求める型の逆を行くような女であった。好きになるにはあまりに顔の凹凸が際立ち、肌が弱そうで、頬骨が張り、やつれた顔立ちをしている。目は美しいがあまり大きいので重みでたわんで顔の残りをひずませ、顔色が悪いか機嫌が悪いような様子をいつも見せていた。この劇場での紹介からしばらくしてスワンに手紙が届き、コレクションを拝見してもよいか、「美しいものを好む無知な女である私」はとても興味を持っているといってきた。あなたのことが、「お茶と本があってとても快適」だと想像する「あなたのhome」でお会いしてみればもっとわかるだろうとも書いてあった。とはいえ、女は男があんな街区に住んでいることに驚きを隠さなかった。そちらはさぞ味気ないことだろう、「こんなにsmartなあなたには釣り合いません」というのである。
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