釜飯屋の更級日記

澪標(一)

神無月、源氏、故桐壺院のために御八講みはこうを行う。
 
帝、朧月夜と物語。
 
如月、東宮御元服。
同二十余日、東宮受禅。
承香しょうきょう殿女御と院との御子、立太子。
同時に源氏、内大臣に任ぜられる。
致仕の左大臣、摂政太政大臣に任ぜられる。
 
宰相中将(かつての頭中将)権中納言に任ぜられる。
四の君の娘を入内させようとする。
 
二条院の東の院、造作。
国立国会図書館デジタルアーカイブより
弥生十六日、明石上お産。
 かつての宿曜すくようの占いの中でも、
「お子は三人。帝、后が必ず並んでお生まれになるはずです。最も下の者も、太政大臣として位人臣を極めるはずでございます」
と申していたことが取り分けかなったようだ。大体、御自分が無上の位に昇り、世の政を行うことになるはずと、あれほど優れた、あまたの人相見たちが口々に言っていたことを、年来は、世の中の煩わしさに皆考えないようにしておいでになったのに、藤壺の子である当代の御即位がこうしてかなったことを思いどおりのことでうれしいとお思いになる。自らも避けておいでになる筋の予言については、更にありそうもないこととお思いになる。「あまたの皇子たちの中でも優れてかわいがってくださったのにそれでも臣下とお思い定めになったそのお心を思うにも、宿世はそこから遠かったのだ。主上がこうしていらっしゃるのだから、あらわに人は知らぬことだが人相見のあの言葉も根拠のないことではなかったのだ」とお心の内にお思いになった。
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