釜飯屋の更級日記

絵合(二)

弥生十余日、梅壺女御と弘徽殿女御、絵合。
『源氏物語絵巻』 メトロポリタン美術館コレクションより
朱雀院、絵を梅壺に奉る。
 
また御前に絵合。
土佐派『源氏物語画帖』 メトロポリタン美術館コレクションより
 左になお一番という果てになってあの須磨の巻が出てきたので、権中納言はお心も騒いでしまった。こちらでも心して果ての巻には、殊に心を打つ優れたものをえっておおきになったのに、こんな優れた名人が、静思して精一杯お描きになったものとは、比べようがない。帥宮を始めとして、涙をおとどめにならない。その折も心苦しく悲しく思ってはおいでになったが、それよりも、御境遇、お心に思っておいでになったことが、ただ今のことのように見えるほど、そこの様子、はっきりとは知らなかった浦々、磯を、隠れもなくお描き表しになってある。草仮名の手に仮名を所々交ぜて書いて、真面目な詳しい日記ではなく、物悲しい歌なども交じっているので、もっと見たくなる。誰も別のことはお心に掛けなくなり、様々な絵の興も、すっかりこちらに移るほど、それは感慨深く面白かった。よろずのことが、その前では皆崩れてしまったように、左の勝ちとなった。
源氏、帥宮と物語。
物語のついでに遊び。
山里に堂を建てる。(絵合終)
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