釜飯屋の更級日記

若紫(四)

紫上、手習のついでに源氏に返歌を書く。
国立国会図書館デジタルアーカイブより
 女君は、男君がおいでにならないなどして物寂しい夕暮れなどばかりは、尼君を恋うてお泣きになったりもするけれど、父宮のことは殊にお思い出しになることもない。元より極まれにお会いになるだけであったから、今はただこの継親ままおやのそばにいて、はなはだむつんでおいでになる。お帰りになれば、まず出迎えて優しく語らい、懐に這入って坐っていても、煩わしく恥ずかしいとはいささかも思っていない。そんなふうではなはだ愛らしいものであった。「さかしらな心があり、あれやこれやと難しいたちになってしまえば、自分の心地としても、少し案にたがう節も出てこようかと気が置かれ、恋人の方にも、恨みがちになったり思いの外のことがおのずから出てくるというのに、本当にかわいらしい遊び相手だ。娘などでも、やはりこれほどになれば、心安く振る舞ったり、隔てのない様子で起き伏ししたりはできまいに、これは、本当に勝手の違ったまな娘である」と思っておいでになるらしい。(若紫終)
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