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更級日記

(二十八)司召

 翌年、睦月の司召に父の祝いをできそうなことがあったのに、そのかいもなかった朝早く、同じ心に思っているはずの人のもとより
「今年こそ、そうはいってもと思いつつ、明けるのを待つ待ち遠しさよ」
と言って
 
  明くる待つ 鐘の声にも夢覚めて
   秋のもも夜の心地せしかな
 
(明けるのを待っていましたが、鐘の声にも夢は覚めて、秋の百夜が過ぎた心地がしたのでした)
 
と言ってきた返事に、
 
  暁を何に待ちけむ
   思ふこと成る鳴るとも聞かぬ 鐘の音ゆゑ
 
(なぜ暁を待っていたのでしょう。思うことが成り、鳴るとも聞かぬその鐘の音ゆえに)
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作成者: com

内容
・日本の(主に平安)古典の現代語訳

対象読者
・古文の授業で習った作品の全体像を知りたい中高生
・日本の古典にもう一度触れてみたくなった大人

翻訳の方針
・主語をなるべく補う。呼称もなるべく統一。
・一つの動詞に尊敬語と謙譲語が両方つく場合、尊敬語のみを訳出。
 (例)「見たてまつりたまふ」→「御覧になる(×拝見なさる)」
・今でも使われている単語は無理に言い換えない。
・説明的な文章を排し、簡潔に。

※これらは受験古文の方針とは異なるかもしれませんが、現代語としての完成度を優先しました。

作品
・完了 :更級日記(令和二年四月~七月)
・進行中:源氏物語(抄)(令和二年七月~)
・今後手がけたい:とはずがたり、紫式部日記、枕草子、蜻蛉日記、和泉式部日記、夜の寝覚め、堤中納言物語、伊勢物語、竹取物語、大鏡、増鏡、土佐日記

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