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更級日記

(三十四)木の葉

 神無月の下旬にまたちょっと来てみると、木暗く茂っていた木の葉も残りなく散り乱れて、一面が物悲しげに見え、心地よげにさらさらと流れていた水も、木の葉にうずもれて跡ばかりが見える。
 
  水さへぞみ絶えにける
   木の葉散る嵐の山の心細さに
 
(澄んだ水さえ住むのをやめてしまったのだ。木の葉を散らす嵐の山の心細さに)
 
 例のそこにいる尼に
「春まで命があれば必ず伺います。花盛りとなりましたら、まず告げてください」
などと言って帰ったけれども、年が改まって、弥生の十余日になるまでも音沙汰がないので
 
  契りおきし 花の盛りを告げぬかな
   春やまだ来ぬ 花や匂はぬ
 
(契っておいたように花の盛りを告げてはくださらないのですね。春はまだ来ないですか。花は匂いませんか)
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作成者: com

内容
・日本の(主に平安)古典の現代語訳

対象読者
・古文の授業で習った作品の全体像を知りたい中高生
・日本の古典にもう一度触れてみたくなった大人

翻訳の方針
・主語をなるべく補う。呼称もなるべく統一。
・一つの動詞に尊敬語と謙譲語が両方つく場合、尊敬語のみを訳出。
 (例)「見たてまつりたまふ」→「御覧になる(×拝見なさる)」
・今でも使われている単語は無理に言い換えない。
・説明的な文章を排し、簡潔に。

※これらは受験古文の方針とは異なるかもしれませんが、現代語としての完成度を優先しました。

作品
・完了 :更級日記(令和二年四月~七月)
・進行中:源氏物語(抄)(令和二年七月~)
・今後手がけたい:とはずがたり、紫式部日記、枕草子、蜻蛉日記、和泉式部日記、夜の寝覚め、堤中納言物語、伊勢物語、竹取物語、大鏡、増鏡、土佐日記

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