神無月の下旬にまたちょっと来てみると、木暗く茂っていた木の葉も残りなく散り乱れて、一面が物悲しげに見え、心地よげにさらさらと流れていた水も、木の葉にうずもれて跡ばかりが見える。
水さへぞ住 み絶えにける
木の葉散る嵐の山の心細さに
(澄んだ水さえ住むのをやめてしまったのだ。木の葉を散らす嵐の山の心細さに)
例のそこにいる尼に
「春まで命があれば必ず伺います。花盛りとなりましたら、まず告げてください」
などと言って帰ったけれども、年が改まって、弥生の十余日になるまでも音沙汰がないので
契りおきし 花の盛りを告げぬかな
春やまだ来ぬ 花や匂はぬ
(契っておいたように花の盛りを告げてはくださらないのですね。春はまだ来ないですか。花は匂いませんか)
水さへぞ
木の葉散る嵐の山の心細さに
(澄んだ水さえ住むのをやめてしまったのだ。木の葉を散らす嵐の山の心細さに)
例のそこにいる尼に
「春まで命があれば必ず伺います。花盛りとなりましたら、まず告げてください」
などと言って帰ったけれども、年が改まって、弥生の十余日になるまでも音沙汰がないので
契りおきし
春やまだ来ぬ
(契っておいたように花の盛りを告げてはくださらないのですね。春はまだ来ないですか。花は匂いませんか)