こうして宮仕えに出たとなれば、それにもそのまま慣れ、俗事に紛れてはしまうにしても、ねじけた人のように思われもしない間は、おのずから世の人と同じようにも私を思い、取り扱ってくださることもあったろうに、両親も、本当に心得がなく、程なく私を家内に据えて閉じ込めてしまう。
それでたちまち威光をきらめかす境遇になどなろうはずもなく、至って由ない、気もそぞろな私であったとはいえ、殊の外、案にたごうてしまった境遇なのである。
幾千度 水の田芹 を摘みしかば
思ひしことの露もかなはぬ
(水田の芹を何千回と摘んだところで、思ったことはつゆもかなうことがない)
と独り言がこぼれるばかりであった。
それでたちまち威光をきらめかす境遇になどなろうはずもなく、至って由ない、気もそぞろな私であったとはいえ、殊の外、案にたごうてしまった境遇なのである。
思ひしことの露もかなはぬ
(水田の芹を何千回と摘んだところで、思ったことはつゆもかなうことがない)
と独り言がこぼれるばかりであった。