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更級日記

(五十九)冬の夜

 冬の空が、月もなく雪も降らないながら、星の光で、さすがにくまなくさえ渡っていたある夜を、向いの頼通よりみち殿のお住まいに伺候している人々と、物語をして明かしつつ、明ければ立ち別れ立ち別れしつつ退出したのを、あちらの人が思い出して
 
  月もなく 花も見ざりし 冬の夜の 
   心に染みて恋しきやなぞ
 
(月もなく、花も見ていないあの冬の夜が、心に染みて恋しいのはなぜでしょう)
 
自分もそう思うことなので、同じ心であるのも面白く
 
  さえし夜の氷は袖にまだ解けで
   冬の夜ながら音をこそは泣け
 
(さえ渡っていたあの夜の、涙の氷も袖の上にあり、まだ解けぬまま、あの冬の夜そのままに泣いております)
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作成者: com

内容
・日本の(主に平安)古典の現代語訳

対象読者
・古文の授業で習った作品の全体像を知りたい中高生
・日本の古典にもう一度触れてみたくなった大人

翻訳の方針
・主語をなるべく補う。呼称もなるべく統一。
・一つの動詞に尊敬語と謙譲語が両方つく場合、尊敬語のみを訳出。
 (例)「見たてまつりたまふ」→「御覧になる(×拝見なさる)」
・今でも使われている単語は無理に言い換えない。
・説明的な文章を排し、簡潔に。

※これらは受験古文の方針とは異なるかもしれませんが、現代語としての完成度を優先しました。

作品
・完了 :更級日記(令和二年四月~七月)
・進行中:源氏物語(抄)(令和二年七月~)
・今後手がけたい:とはずがたり、紫式部日記、枕草子、蜻蛉日記、和泉式部日記、夜の寝覚め、堤中納言物語、伊勢物語、竹取物語、大鏡、増鏡、土佐日記

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