冬の空が、月もなく雪も降らないながら、星の光で、さすがにくまなくさえ渡っていたある夜を、向いの頼通 殿のお住まいに伺候している人々 と、物語をして明かしつつ、明ければ立ち別れ立ち別れしつつ退出したのを、あちらの人が思い出して
月もなく 花も見ざりし 冬の夜の
心に染みて恋しきやなぞ
(月もなく、花も見ていないあの冬の夜が、心に染みて恋しいのはなぜでしょう)
自分もそう思うことなので、同じ心であるのも面白く
さえし夜の氷は袖にまだ解けで
冬の夜ながら音をこそは泣け
(さえ渡っていたあの夜の、涙の氷も袖の上にあり、まだ解けぬまま、あの冬の夜そのままに泣いております)
月もなく
心に染みて恋しきやなぞ
(月もなく、花も見ていないあの冬の夜が、心に染みて恋しいのはなぜでしょう)
自分もそう思うことなので、同じ心であるのも面白く
さえし夜の氷は袖にまだ解けで
冬の夜ながら音をこそは泣け
(さえ渡っていたあの夜の、涙の氷も袖の上にあり、まだ解けぬまま、あの冬の夜そのままに泣いております)