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更級日記

(六十九)思いの火

 昔はなはだ親しく交際しており、夜昼に歌など詠み交わしていた人と、本当に昔のようにではないけれど結局連絡を絶やすこともなかったというのに、越前の守の妻として下っていったらそれも絶えてしまい、音沙汰もなくなったので、辛うじて便りを尋ねて、こちらより
 
  絶えざりし思も今は絶えにけり
   こしのわたりの雪の深さに
 
(絶えることのなかった思いの火も今は絶えてしまったのですね。越州辺りの雪の深さに)
 
と言った返事に
 
  白山しらやまの雪の下なるさざれ石の
   中の思は消えむものかは
 
(白山の雪の下の小石の中の火のように、私の中の思いの火は消えるものですか)
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作成者: com

内容
・日本の(主に平安)古典の現代語訳

対象読者
・古文の授業で習った作品の全体像を知りたい中高生
・日本の古典にもう一度触れてみたくなった大人

翻訳の方針
・主語をなるべく補う。呼称もなるべく統一。
・一つの動詞に尊敬語と謙譲語が両方つく場合、尊敬語のみを訳出。
 (例)「見たてまつりたまふ」→「御覧になる(×拝見なさる)」
・今でも使われている単語は無理に言い換えない。
・説明的な文章を排し、簡潔に。

※これらは受験古文の方針とは異なるかもしれませんが、現代語としての完成度を優先しました。

作品
・完了 :更級日記(令和二年四月~七月)
・進行中:源氏物語(抄)(令和二年七月~)
・今後手がけたい:とはずがたり、紫式部日記、枕草子、蜻蛉日記、和泉式部日記、夜の寝覚め、堤中納言物語、伊勢物語、竹取物語、大鏡、増鏡、土佐日記

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