うらうらとしてのどかな宮家で、心を同じゅうする三人ばかり、物語などして退出した又の日、つれづれなままに、二人のことが恋しく思い出されるので
袖ぬるる荒磯波 と知りながら
共にかづきをせしぞ恋しき
(袖をぬらすと知りながら、荒磯の波を共にくぐった、あの頃が恋しいのです)
と申し上げたところ、
荒磯は あされど何の貝 なくて
うしおにぬるる 海士の袖かな
(あの荒磯は、貝をあさっても何のかいもなく、海士の袖はうしおにぬれただけでした)
今一人は
海松布 生ふる浦にあらずは
荒磯の波間数ふるあまもあらじを
(浦に海松 が生えていなければ、波間を数えて水にくぐる海士もないように、あなたを見ることができなければ、あの荒磯に行く人もおりますまいに)
袖ぬるる
共にかづきをせしぞ恋しき
(袖をぬらすと知りながら、荒磯の波を共にくぐった、あの頃が恋しいのです)
と申し上げたところ、
荒磯は
うしおにぬるる
(あの荒磯は、貝をあさっても何のかいもなく、海士の袖はうしおにぬれただけでした)
今一人は
荒磯の波間数ふるあまもあらじを
(浦に