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更級日記

(七十六)夫下向

 二十七日に下る。息子はこれに添うて下る。
 きぬたを打った紅のうちきに、萩襲はぎがさね狩衣かりぎぬ紫苑しおん色の綾織物あやおりもの指貫さしぬきを着て、太刀をはいて、夫の尻に立って歩み出すのだけれども、その夫も、青にび色の綾織物の指貫に狩衣を着て、廊の辺りで馬に乗った。
 騒ぐ声も辺りに満ちたまま下っていったその後は、殊の外つれづれになったけれども、非常な遠路ではないと聞くので、先々のように心細くなどは思われずにいたのに、送りの人々が、又の日に帰って、はなはだおごそかに下っておゆきになりましたなどと言ってから
「今日の暁に、はなはだ大きな人だまが飛んで京の方へ行きました」
と語るけれども、供の人などのものであろうと思う。
 忌ま忌ましいことのようには思いも寄らない。
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作成者: com

内容
・日本の(主に平安)古典の現代語訳

対象読者
・古文の授業で習った作品の全体像を知りたい中高生
・日本の古典にもう一度触れてみたくなった大人

翻訳の方針
・主語をなるべく補う。呼称もなるべく統一。
・一つの動詞に尊敬語と謙譲語が両方つく場合、尊敬語のみを訳出。
 (例)「見たてまつりたまふ」→「御覧になる(×拝見なさる)」
・今でも使われている単語は無理に言い換えない。
・説明的な文章を排し、簡潔に。

※これらは受験古文の方針とは異なるかもしれませんが、現代語としての完成度を優先しました。

作品
・完了 :更級日記(令和二年四月~七月)
・進行中:源氏物語(抄)(令和二年七月~)
・今後手がけたい:とはずがたり、紫式部日記、枕草子、蜻蛉日記、和泉式部日記、夜の寝覚め、堤中納言物語、伊勢物語、竹取物語、大鏡、増鏡、土佐日記

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