カテゴリー
更級日記

(七十八)悔恨

 もしも昔より、由ない物語、歌のことにのみ心を引かれず、夜昼心掛けてお勤めをしていたら、本当にこんな、夢に異ならぬ一生をば見ずにいたことであろう。
 初瀬にて前回
「稲荷より下さった、しるしの杉である」
と言って夢の中で投げ出された。それで、もし寺を出てそのまま稲荷に詣でていたら、こんなことにはならかったろう。
 天照大神を念じ奉れという、年来私に見えていた夢は、どなたかの乳母をして内裏あたりにおり、帝や后のお陰を被るはずになっているのだと、こんな夢判断ばかりであったけれど、そんなことは一つもかなわずにしまった。
 ただ、悲しげに見えたあの鏡の影のみに、たがうところもないのが、悲しく情けない。
 こんなふうに、何事も心のままにならずにしまう私なので、功徳をなすこともせず漂うているのみである。
Pocket
LINEで送る

作成者: com

内容
・日本の(主に平安)古典の現代語訳

対象読者
・古文の授業で習った作品の全体像を知りたい中高生
・日本の古典にもう一度触れてみたくなった大人

翻訳の方針
・主語をなるべく補う。呼称もなるべく統一。
・一つの動詞に尊敬語と謙譲語が両方つく場合、尊敬語のみを訳出。
 (例)「見たてまつりたまふ」→「御覧になる(×拝見なさる)」
・今でも使われている単語は無理に言い換えない。
・説明的な文章を排し、簡潔に。

※これらは受験古文の方針とは異なるかもしれませんが、現代語としての完成度を優先しました。

作品
・完了 :更級日記(令和二年四月~七月)
・進行中:源氏物語(抄)(令和二年七月~)
・今後手がけたい:とはずがたり、紫式部日記、枕草子、蜻蛉日記、和泉式部日記、夜の寝覚め、堤中納言物語、伊勢物語、竹取物語、大鏡、増鏡、土佐日記

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です