年月は改まり過ぎてゆくけれど、夢のように最期を見届けたあの折のことを思い出せば、心地もうろたえ、目もくらむようなので、その折のことはまた定かに思い出すことがない。
人々 は皆よそに別れて住むようになって、元の家に独りはなはだ心細く悲しいままに、物を思うて明かし、思い煩って、久しく訪れない人に
茂りゆく蓬 が露にそぼちつつ
人に問はれぬ音をのみぞ泣く
(茂りゆく蓬の露にぬれながら、人が訪ねてくれないことを泣くのです)
相手は、尼となった人である。
世の常の宿の蓬を思ひやれ
背き果てたる庭の草むら
(尋常の家の蓬のことを思いやってください。すっかりこの世を背いているあなたの庭の草むらから)
茂りゆく
人に問はれぬ音をのみぞ泣く
(茂りゆく蓬の露にぬれながら、人が訪ねてくれないことを泣くのです)
相手は、尼となった人である。
世の常の宿の蓬を思ひやれ
背き果てたる庭の草むら
(尋常の家の蓬のことを思いやってください。すっかりこの世を背いているあなたの庭の草むらから)