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更級日記

(八十二・終)蓬

 年月は改まり過ぎてゆくけれど、夢のように最期を見届けたあの折のことを思い出せば、心地もうろたえ、目もくらむようなので、その折のことはまた定かに思い出すことがない。
 人々は皆よそに別れて住むようになって、元の家に独りはなはだ心細く悲しいままに、物を思うて明かし、思い煩って、久しく訪れない人に
 
  茂りゆくよもぎが露にそぼちつつ
   人に問はれぬ音をのみぞ泣く
 
(茂りゆく蓬の露にぬれながら、人が訪ねてくれないことを泣くのです)
 
相手は、尼となった人である。
 
  世の常の宿の蓬を思ひやれ
   背き果てたる庭の草むら
 
(尋常の家の蓬のことを思いやってください。すっかりこの世を背いているあなたの庭の草むらから)
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作成者: com

内容
・日本の(主に平安)古典の現代語訳

対象読者
・古文の授業で習った作品の全体像を知りたい中高生
・日本の古典にもう一度触れてみたくなった大人

翻訳の方針
・主語をなるべく補う。呼称もなるべく統一。
・一つの動詞に尊敬語と謙譲語が両方つく場合、尊敬語のみを訳出。
 (例)「見たてまつりたまふ」→「御覧になる(×拝見なさる)」
・今でも使われている単語は無理に言い換えない。
・説明的な文章を排し、簡潔に。

※これらは受験古文の方針とは異なるかもしれませんが、現代語としての完成度を優先しました。

作品
・完了 :更級日記(令和二年四月~七月)
・進行中:源氏物語(抄)(令和二年七月~)
・今後手がけたい:とはずがたり、紫式部日記、枕草子、蜻蛉日記、和泉式部日記、夜の寝覚め、堤中納言物語、伊勢物語、竹取物語、大鏡、増鏡、土佐日記

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