皐月五日、明石の姫君の五十日 の祝 。
源氏、五月雨の頃、花散里の方に渡る。
源氏、五月雨の頃、花散里の方に渡る。
源氏、元のごとく淑景舎を曹司とする。
藤壺、太上天皇に準じた御封 を賜る。
葉月、権中納言(かつての頭中将)の娘、入内。
藤壺、太上天皇に準じた
葉月、権中納言(かつての頭中将)の娘、入内。
その秋、源氏は住吉に詣でられる。お礼参りをなさろうということだから立派な行列で世の中もどよめいて、月卿雲客が我も我もと奉仕なさる。折しも、あの、明石の人も、いつもは年ごとに詣でていたのを、去年今年は、障ることがあって中断していたそのおわびを兼ねて参詣を思い立った。舟にて詣でたのである。岸に着けたその折に、見れば、言い騒ぎながら詣でていらっしゃる人の物音が、なぎさに満ちていて、いかめしい奉納品を持って連なっている。楽人 、十 つらなどは、装束を整え、その容貌も選んである。どなたが詣でられたのかと人が問うたところ「内大臣殿が、お礼参りで詣でられたのに、それを知らぬ人もあったのだな」と言って、たわいない身分の下衆すら心地よさそうに笑っている。
「本当に驚いた。月日は幾らもあるというのに。かえって、こんな御境遇を遠くに見てしまうと、自分の身の程が取るに足らないものにも思えてしまう。あの方から懸け離れた宿世とばかりも言えないながら、あんな取るに足らない身分の者ですら物思いもなさそうにこの奉仕を晴れがましく思っているようなのに、どれほど罪深い身だというので、心に掛けて待ち遠しくあの方を思い申し上げつつ、こんな評判になっていたことも知らずに出てきてしまったのだろう」などと思い続けていると、いたく悲しくて人知れず袖もぬれそぼった。深緑の松原に花紅葉をこき散らしたように見える、色の濃いあるいは薄い上のきぬが、数えきれないほどだ。六位の中でも蔵人のきぬは青色が際立って見え、あの賀茂の水垣を恨んだ右近将監 も、衛門尉 になって、事々しそうな随身を連れた蔵人となっている。良清も、衛門佐 になって、人より殊に物思いもないような様子で仰山な赤ぎぬ姿の至っ て良い姿である。
前斎宮帰京。母である六条御息所、病によって尼となる。
源氏、六条御息所のところに参る。
七、八日後、御息所死去。
文を前斎宮に奉る。
源氏、六条御息所のところに参る。
七、八日後、御息所死去。
文を前斎宮に奉る。
朱雀院、前斎宮を思う。
源氏、藤壺に参って前斎宮入内のことを申す。(澪標終)
源氏、藤壺に参って前斎宮入内のことを申す。(澪標終)