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更級日記

(九)富士川

 富士川というのは富士の山より落ちている水である。
 その国の人が現れて語ったこと……
「以前あるところへ参りました時に、いたく暑うございましたので、この水のほとりに休みつつ見ますれば、川上の方より、黄色をしたものが流れてまいって、物に付いてとどまっておりますのを見れば、反故ほごでございます。取り上げて見ますれば、黄色をした紙に、にて、濃く、折り目正しく書かれているのでございます。それが珍しくて見ますれば、翌年任官があるはずの国々を、除目じもくのごとく皆書きまして、翌年空くはずのこの国にも、国守を任命してございまして、それに添えてまた二人を任じておりました。これは珍しいと驚きまして、取り上げて、干して収めたのですけれども、翌年の司召つかさめしに、その文に書かれてありましたのと一つもたがわず、この国の守とありましたそのままでございましたのに、三月みつきの内に亡くなりまして、また成り代わりましたのも、その傍らに書きつけられておりました人だったのでございます。そのようなことがございましてねえ。翌年の司召などは、前年に、この山にたくさんの神々が集まって御任命になるのだなと拝察しました。珍しいことでございました」
と語る。
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作成者: com

内容
・日本の(主に平安)古典の現代語訳

対象読者
・古文の授業で習った作品の全体像を知りたい中高生
・日本の古典にもう一度触れてみたくなった大人

翻訳の方針
・主語をなるべく補う。呼称もなるべく統一。
・一つの動詞に尊敬語と謙譲語が両方つく場合、尊敬語のみを訳出。
 (例)「見たてまつりたまふ」→「御覧になる(×拝見なさる)」
・今でも使われている単語は無理に言い換えない。
・説明的な文章を排し、簡潔に。

※これらは受験古文の方針とは異なるかもしれませんが、現代語としての完成度を優先しました。

作品
・完了 :更級日記(令和二年四月~七月)
・進行中:源氏物語(抄)(令和二年七月~)
・今後手がけたい:とはずがたり、紫式部日記、枕草子、蜻蛉日記、和泉式部日記、夜の寝覚め、堤中納言物語、伊勢物語、竹取物語、大鏡、増鏡、土佐日記

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