「ぬまじり」というところも滞りなく過ぎてから、ひどく発病して遠江にかかった。
小夜 の中山などを越えたとかいう折のことも覚えていない。
はなはだ苦しいので、天竜という川のほとりに仮屋をこしらえたので、そこにいて数日が過ぎる内に、次第に癒える。
冬も深まっているので、川風がしきりに荒々 しく吹き上げて耐え難く思われた。
ここを渡って、浜名の橋に着いた。
浜名の橋は、下った時には黒木を渡してあったが、この度は跡すら見えないので、舟にて渡る。
入り江に渡してあった橋なのである。
外海はひどく波が高くて、入り江の、ほかに何もなくただ松原が茂っているむなしい洲 と洲の真ん中より、波が寄せては返すのも、種々 の色の玉のように見え、誠に松の末より波は越えて、はなはだ面白い。
はなはだ苦しいので、天竜という川のほとりに仮屋をこしらえたので、そこにいて数日が過ぎる内に、次第に癒える。
冬も深まっているので、川風がしきりに
ここを渡って、浜名の橋に着いた。
浜名の橋は、下った時には黒木を渡してあったが、この度は跡すら見えないので、舟にて渡る。
入り江に渡してあった橋なのである。
外海はひどく波が高くて、入り江の、ほかに何もなくただ松原が茂っているむなしい