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更級日記

(十)遠江

 「ぬまじり」というところも滞りなく過ぎてから、ひどく発病して遠江にかかった。
 小夜さよの中山などを越えたとかいう折のことも覚えていない。
 はなはだ苦しいので、天竜という川のほとりに仮屋をこしらえたので、そこにいて数日が過ぎる内に、次第に癒える。
 冬も深まっているので、川風がしきりに荒々しく吹き上げて耐え難く思われた。
 ここを渡って、浜名の橋に着いた。
 浜名の橋は、下った時には黒木を渡してあったが、この度は跡すら見えないので、舟にて渡る。
 入り江に渡してあった橋なのである。
 外海はひどく波が高くて、入り江の、ほかに何もなくただ松原が茂っているむなしいと洲の真ん中より、波が寄せては返すのも、種々の色の玉のように見え、誠に松の末より波は越えて、はなはだ面白い。
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作成者: com

内容
・日本の(主に平安)古典の現代語訳

対象読者
・古文の授業で習った作品の全体像を知りたい中高生
・日本の古典にもう一度触れてみたくなった大人

翻訳の方針
・主語をなるべく補う。呼称もなるべく統一。
・一つの動詞に尊敬語と謙譲語が両方つく場合、尊敬語のみを訳出。
 (例)「見たてまつりたまふ」→「御覧になる(×拝見なさる)」
・今でも使われている単語は無理に言い換えない。
・説明的な文章を排し、簡潔に。

※これらは受験古文の方針とは異なるかもしれませんが、現代語としての完成度を優先しました。

作品
・完了 :更級日記(令和二年四月~七月)
・進行中:源氏物語(抄)(令和二年七月~)
・今後手がけたい:とはずがたり、紫式部日記、枕草子、蜻蛉日記、和泉式部日記、夜の寝覚め、堤中納言物語、伊勢物語、竹取物語、大鏡、増鏡、土佐日記

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