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更級日記

(五十)宮仕え

 まず一夜参上する。
 濃淡八枚ばかりの菊襲きくがさねの上に濃い掻練かいねりを着た。
 あれほど物語にのみ心を入れて、それを見るよりほか、行き通う親類などすら殊になく、昔めいた両親の陰にいるばかりで、月や花を見るよりほかのことはない習いのままに出ていったその折の心地は夢のようで、うつつとも思われぬまま、暁には退出してしまう。
 田舎風の私の考えには、安定した実家住みよりもかえって、面白いことを見聞きして、心も慰むだろうかと思う折々もあったのに、至って間が悪く、悲しいこともあるようだと思うけれども、どうしようもない。
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作成者: com

内容
・日本の(主に平安)古典の現代語訳

対象読者
・古文の授業で習った作品の全体像を知りたい中高生
・日本の古典にもう一度触れてみたくなった大人

翻訳の方針
・主語をなるべく補う。呼称もなるべく統一。
・一つの動詞に尊敬語と謙譲語が両方つく場合、尊敬語のみを訳出。
 (例)「見たてまつりたまふ」→「御覧になる(×拝見なさる)」
・今でも使われている単語は無理に言い換えない。
・説明的な文章を排し、簡潔に。

※これらは受験古文の方針とは異なるかもしれませんが、現代語としての完成度を優先しました。

作品
・完了 :更級日記(令和二年四月~七月)
・進行中:源氏物語(抄)(令和二年七月~)
・今後手がけたい:とはずがたり、紫式部日記、枕草子、蜻蛉日記、和泉式部日記、夜の寝覚め、堤中納言物語、伊勢物語、竹取物語、大鏡、増鏡、土佐日記

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