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ラフュマ版『パンセ』(パスカル)

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 もし神がいるならば神だけを愛すべきであり、この世の空しいものを愛してはならない。知恵の書には不敬虔な者たちの考えを載せてあるが、そのもといは、神はいないということにしかない。だからこの世のものを楽しもうと言うのである。最悪の考え方である。もし、愛すべき神がいるとしたならば、このような結論にではなくその逆に至るであろう。そうして、知恵ある者の結論はこうだ。神はいるのだから、この世のものを楽しむのはやめよう。
 それゆえ、我々を駆り立ててこの世のものに身を献げさせるものはすべて悪である。なぜならそのようなものは我々を妨げ、神を知る者には仕えさせず、知らない者には求めさせないからである。ところで我々は欲望に満ち、それゆえ悪に満ちており、それゆえ我々自身と、我々をかき立てて神以外のものに身を献げさせるすべてのものとを憎まねばならない。
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ラフュマ版『パンセ』(パスカル)

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 幾何学の精神と、繊細の精神との違い。
 前者では原理は明白だが用途が通常から遠いので、習慣がないためにその方面へ頭を向けにくいだけで、少しでもそちらへ向けてしまえばそれらの原理は十分に会得される。調子っぱずれの精神の持ち主でもない限り、見落とすことがほとんど不可能なほどの粗大な原理に基づいて推論を誤ることなどできまい。