東国より人が来た。
神拝という業をして国のあちこちを回ったところ、水の美しく流れている野がはるばるとあり、そこに木陰があるのを……美しいところだ。見せることもできないが…… とまずあなたを思い出して、ここは何というところかと問うと、子しのびの森と申しますと答えたのが、身によそえられてはなはだ悲しかったので、馬より降りてそこを幾時も眺めていたのです。
とどめおきて我がごと物や思ひけむ
見るに悲しき子しのびの森
(我がごとくお前も、子を置いてきて物を思ったのであろう。見るにも悲しい子しのびの森よ)
と思われました。
とあるのを見る心地は改めて言うにも及ばない。
返事には
子しのびを聞くにつけても
とどめおきし秩 父の山のつらきあづま路
(子しのびと聞くにつけても、私をここにとどめておいたお父上は、東国秩父の山道のようにむごいお方です)
神拝という業をして国のあちこちを回ったところ、水の美しく流れている野がはるばるとあり、そこに木陰があるのを……美しいところだ。見せることもできないが
とどめおきて我がごと物や思ひけむ
見るに悲しき子しのびの森
(我がごとくお前も、子を置いてきて物を思ったのであろう。見るにも悲しい子しのびの森よ)
と思われました。
とあるのを見る心地は改めて言うにも及ばない。
返事には
子しのびを聞くにつけても
とどめおきし
(子しのびと聞くにつけても、私をここにとどめておいたお父上は、東国秩父の山道のようにむごいお方です)