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更級日記

(四十二)子しのびの森

 東国より人が来た。
 
神拝という業をして国のあちこちを回ったところ、水の美しく流れている野がはるばるとあり、そこに木陰があるのを……美しいところだ。見せることもできないが……とまずあなたを思い出して、ここは何というところかと問うと、子しのびの森と申しますと答えたのが、身によそえられてはなはだ悲しかったので、馬より降りてそこを幾時も眺めていたのです。
 とどめおきて我がごと物や思ひけむ
  見るに悲しき子しのびの森
(我がごとくお前も、子を置いてきて物を思ったのであろう。見るにも悲しい子しのびの森よ)
と思われました。

 
とあるのを見る心地は改めて言うにも及ばない。
 返事には
 
 子しのびを聞くにつけても
  とどめおきし父の山のつらきあづま路
(子しのびと聞くにつけても、私をここにとどめておいたお父上は、東国秩父の山道のようにむごいお方です)

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作成者: com

内容
・日本の(主に平安)古典の現代語訳

対象読者
・古文の授業で習った作品の全体像を知りたい中高生
・日本の古典にもう一度触れてみたくなった大人

翻訳の方針
・主語をなるべく補う。呼称もなるべく統一。
・一つの動詞に尊敬語と謙譲語が両方つく場合、尊敬語のみを訳出。
 (例)「見たてまつりたまふ」→「御覧になる(×拝見なさる)」
・今でも使われている単語は無理に言い換えない。
・説明的な文章を排し、簡潔に。

※これらは受験古文の方針とは異なるかもしれませんが、現代語としての完成度を優先しました。

作品
・完了 :更級日記(令和二年四月~七月)
・進行中:源氏物語(抄)(令和二年七月~)
・今後手がけたい:とはずがたり、紫式部日記、枕草子、蜻蛉日記、和泉式部日記、夜の寝覚め、堤中納言物語、伊勢物語、竹取物語、大鏡、増鏡、土佐日記

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