二年ばかりしてまた石山に籠もっていると、夜もすがら雨がひどく降るのである。
旅にあると雨は至っていとわしいものだと、それを聞いてしとみを押し上げて見れば、有明の月が、谷の底さえ曇りなく見えるほど澄み渡っており、雨と聞えたのは木の根より水の流れる音であった。
谷川の流れは雨と聞こゆれど
ほかよりけなる有明の月
(谷川の流れは雨と聞こえるけれども、よそよりなおさら晴れ渡っている有明の月だ)
旅にあると雨は至っていとわしいものだと、それを聞いてしとみを押し上げて見れば、有明の月が、谷の底さえ曇りなく見えるほど澄み渡っており、雨と聞えたのは木の根より水の流れる音であった。
谷川の流れは雨と聞こゆれど
ほかよりけなる有明の月
(谷川の流れは雨と聞こえるけれども、よそよりなおさら晴れ渡っている有明の月だ)