すだれをかけ、幕など引いてある。
南ははるかに野の方が見やられる。
東西は海が近くていたく面白い。
一面に夕霧が立ってはなはだ面白く、朝寝もせずあちこちを見る。そこを立つのは物悲しかったが、その月の十五日、雨が降って暗い中、国境を出て、下総の国の「いかだ」というところに泊まった。
今にいおりなど浮いてしまいそうに雨が降りなどするので、恐ろしくて寝ることもできない。
野中に丘のようになっているところにただ木が三つ
その日は、雨に濡れたものを干し、国に立ち後れた
内容
・日本の(主に平安)古典の現代語訳
対象読者
・古文の授業で習った作品の全体像を知りたい中高生
・日本の古典にもう一度触れてみたくなった大人
翻訳の方針
・主語をなるべく補う。呼称もなるべく統一。
・一つの動詞に尊敬語と謙譲語が両方つく場合、尊敬語のみを訳出。
(例)「見たてまつりたまふ」→「御覧になる(×拝見なさる)」
・今でも使われている単語は無理に言い換えない。
・説明的な文章を排し、簡潔に。
※これらは受験古文の方針とは異なるかもしれませんが、現代語としての完成度を優先しました。
作品
・完了 :更級日記(令和二年四月~七月)
・進行中:源氏物語(抄)(令和二年七月~)
・今後手がけたい:とはずがたり、紫式部日記、枕草子、蜻蛉日記、和泉式部日記、夜の寝覚め、堤中納言物語、伊勢物語、竹取物語、大鏡、増鏡、土佐日記
「原文」は “バージニア大学 Japanese Text Initiative”(下記リンク)のテキストに作成者が句読点を付し一部の仮名を漢字に直したものです。
http://jti.lib.virginia.edu/japanese/sarashina/SugSara.html
読点は主に以下の目的で打ちました。
・接続詞、接続助詞、副助詞、助詞を伴わない名詞の係る範囲を示す。
(父は喜び、母は悲しんだ。)
・格助詞の係る先を明確にする。
(大急ぎで、逃げた男の後を追い掛けた)
・要素の並列を示す。
(夏の海水浴、秋のハイキング)
・漢字が連続するときに文節の切れ目を示す。
(その時、戸が開いた)
※直接係る単語の間には打たない。
(その時開いた戸)
以下の語を漢字で表記しました。
・常用漢字表にあるもの
・漢語
・固有名詞、人物の呼称
・動植物名
・一音節の名詞
・その他特定の単語[狩衣(かりぎぬ)など]